株式市場の推移:米国・欧州・中国
直近1ヶ月の世界株式市場は、貿易戦争激化への不安から4月下旬にかけて調整しましたが、5月第2週にかけて大きく持ち直しました。米国ではS&P 500指数が4月中旬から下旬にかけて5%近く下落しましたが、その後5月12日の米中関税休戦合意を受け年初来高値付近まで急反発しました。
ハイテク株中心のNASDAQ総合指数もボラティリティが高まりつつ、休戦ニュースで一気に4%以上上昇し、調整分を取り戻しています。企業決算が総じて予想を上回ったことも米株を下支えしました。特にマイクロソフトやグーグルなど主要IT企業が堅調なクラウド需要を示し、市場の安心感に繋がりました。
欧州市場は米中の板挟みで不安定な動きを見せました。欧州STOXX 600指数は4月に入って下落基調となり、一時年初来リターンがゼロ近辺まで縮小しました。ECBの利下げ発表(4月17日)直後は景気対策期待で小反発しましたが、その後も経済指標の弱さから上値の重い展開が続いています。
米中休戦合意に伴い5月11日以降は買い戻しが入りましたが、上昇幅は米国ほど大きくなく、欧州株は相対的に出遅れています。背景にはユーロ高もあり、対ドルでの強含みが輸出競争力を削いでいます。さらに、関税の影響で中国から余剰生産品が欧州市場に流入し、価格競争が激化するとの懸念も指摘されています。
中国本土市場(上海総合指数)は貿易戦争の影響を強く受け、4月は大幅安となりました。中国当局は景気下支えのため預金準備率引き下げやインフラ投資拡大策を打ち出しましたが、市場の不安は拭えず、上海指数は4月に約8%下落しました。
5月に入ると米中協議への期待感から下げ止まり、90日休戦合意が伝わった5月12日には上海指数は年初来高値を更新する急騰を見せました。ただし、中国経済の減速感は鮮明で、4月の製造業PMIは50を割り景気縮小を示唆。輸出も前年同月比で二桁減となっています。今後の景気刺激策の追加が注目されます。
米国の金融政策と利上げ動向
米国ではFRBが政策金利を据え置いた一方、長期金利は低下傾向にあります。10年物国債利回りは4月に一時3.8%台でしたが、5月中旬には3.5%前後へ低下しました。これは市場が年内の複数回の利下げを織り込み始めたためです。
加えて、トランプ政権の関税政策が米景気に与える下押しリスクから将来的な利下げ余地を見込む声が強まりました。FRB内部ではインフレが2%目標付近で推移する限り急な緩和は不要との慎重論が根強く、パウエル議長も「経済への関税影響が見極められるまでは現在の政策金利水準を維持する」と発言しています。
市場金利の動きとFRBスタンスの間にズレが生じており、今後数ヶ月の経済指標(特にインフレ率と雇用統計)によっては市場の利下げ期待が修正される可能性もあります。
米中関係と経済指標(直近1週間)
米中関係は大きな進展を見せました。5月12日に「90日間の関税休戦」で合意し、米国は中国製品への追加関税を145%から30%に、中国も対米関税を125%から10%に減免しました。これにより、貿易摩擦が一時的に和らぎ、S&P500やNASDAQ総合指数も急反発しました。
また、直近1週間で発表された米主要経済指標では、5月9日の新規失業保険申請件数が小幅増加し、労働市場にわずかな緩みの兆しが見られました。失業率は歴史的低水準を維持し、賃金も堅調を維持しています。
5月12日に発表された4月の消費者物価指数(CPI)は前年比+3.5%となり、前月(+3.7%)から鈍化しました。ガソリン価格の安定や中古車価格の下落が寄与し、インフレ圧力の軽減が確認されました。市場ではFRBが次回会合で政策金利を据え置く可能性が高いとの見方が強まっています。
外為市場:ドル円・ユーロ円の動向
為替市場も大きな動きを見せました。ドル円は米中関税休戦合意を受けてドル高・円安が進行し、一時1ドル=148.39円を記録しました。安全資産としての円買いが和らぎ、投資家のリスク選好が強まりました。
ユーロ円も同様に円安方向に振れ、1ユーロ=162円台まで上昇。これはECBの追加利下げ観測が背景にあり、低金利政策が続くことで資金流出が加速しています。欧州のインフレ圧力の後退も手伝い、ユーロ高が継続する見込みです。
市場は今後の米中交渉の行方や、各国中央銀行の政策発表に注目しています。
世界的な政策動向の分析(FRB・ECB・中国)
世界の主要中銀は政策転換期にあります。米FRBは2025年5月時点で政策金利を据え置いていますが、年内利下げ観測も根強く残っています。景気指標次第で年内2〜3回の利下げが市場で織り込まれています。
ECBは4月の理事会で利下げを決定し、7会合連続の緩和に踏み切りました。ラガルド総裁は「輸出減少や投資抑制がユーロ圏成長を下押しする」と述べ、さらなる緩和の可能性も示唆しています。
中国人民銀行(PBoC)もインフラ投資や金融緩和を加速しており、預金準備率引き下げの追加措置も検討中です。景気減速を食い止める動きが強まっています。
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