注目企業の動向|2025年5月6日〜13日

投資ニュース

日本企業の動向

トヨタ自動車 (7203)

トヨタは2025年3月期の業績見通しを発表し、営業利益が前期比▲21%の3.8兆円へ減少する見通しを示しました。背景には米国の関税強化と円高があります。トランプ政権の関税による直接的なコスト増を4〜5月だけで約1800億円と見積もり、米ドル安・円高による為替差損も年間で7450億円に達する見込みです。

一方、ハイブリッド車など環境対応車の好調な需要に支えられ、国内市場は堅調で同四半期利益が+18%増加しています。関税影響の不透明さが課題ですが、電動化と自動運転への巨額投資を継続しており、長期的な成長見通しには期待が集まっています。

ホンダ (7267)

ホンダもトヨタ同様に関税の直撃を受けており、今期利益が▲59%減少する見通しを発表しました。さらに、北米で計画していたEVサプライチェーン構築を延期すると表明しています。これは米国の政策動向が不透明な中で拙速な投資を避けるための措置です。

ホンダは新CEOの下で組織改革とコスト削減にも着手し、欧米の生産拠点見直しに続き、グローバル最適生産体制の構築を急いでいます。中国市場での競争激化もあり、課題は残るものの、将来的なEVシフトには期待が持てます。

日本電信電話 (9432)

NTTはNTTデータの完全子会社化を発表し、国内最大規模のM&Aを完了しました。これにより、グループ内のシナジー効果と海外市場での競争力強化が期待されています。

政府のDX推進に呼応し、5Gインフラの整備やスマートシティ開発を加速しています。通信インフラの安定収益に加え、デジタル化戦略の拡充で長期的な成長が見込まれます。


米国企業の動向

Apple (AAPL)

Appleは米中対立の影響を受けながらも、決算は堅調でした。特にインド市場でのiPhone販売が好調で、世界スマホ販売の首位を獲得しました。米国への輸入関税リスクを軽減するため、インドでの生産シフトを進めており、これは中長期的なコスト削減にもつながる見通しです。

一方、AI技術への取り組みがやや遅れているとの指摘もあり、Siriの改善や生成AIの導入が競合に遅れをとっています。しかし、ブランド力と巨大なエコシステムは依然強固であり、長期的な成長は見込まれます。

Microsoft (MSFT)

Microsoftはクラウド事業と生成AIブームの恩恵を受け、直近決算でも好調を維持しています。特にAzureの成長率は前年比+27%と高水準を維持。生成AIへの投資も積極的で、OpenAIとの連携でAIプラットフォームの強化を進めています。

BingへのAI統合やOffice製品へのCopilot機能提供が相次いでおり、今後も収益成長が期待されます。規制リスクはあるものの、財務体質の健全さと強固なキャッシュフローで安定した成長を続けています。

Google(Alphabet, GOOGL)

Googleは生成AI市場での競争を激化させており、開発者会議(I/O 2025)では対話型AI「Bard」の多言語対応を発表しました。また、検索エンジンへの生成AI導入を進め、広告モデルの最適化を図っています。

YouTubeやGoogle Cloudの成長も堅調で、広告収益の減少をカバーしています。懸念点は規制強化で、特にEUでの独占禁止法の動きが注目されています。しかし、技術力とブランド力に支えられ、長期的な成長は引き続き期待されます。

Tesla (TSLA)

Teslaは値下げ戦略を加速させ、1-3月期の販売台数は前年同期比+36%増となりましたが、値下げによる利益率の低下が影響しました。イーロン・マスクCEOは「短期の利益よりシェア拡大を優先する」と表明し、長期的な市場シェア拡大に注力しています。

また、新型「サイバートラック」の発売と次世代電池の量産が予定されており、今後の成長が注目されています。EVシフトが進む中で、Teslaは依然として業界をリードする存在です。

JP Morgan Chase (JPM)

JP Morganはファースト・リパブリック銀行の破綻を受け、同銀行の資産を救済買収しました。これにより、全米での預金シェアを拡大し、システム上「巨大すぎて潰せない」地位を一段と強化しています。

2025年1-3月期の決算も増収増益で、特にトレーディング収益の増加が顕著でした。米国の利下げ観測があるものの、幅広い金融サービス展開により収益は安定しています。

Johnson & Johnson (JNJ)

Johnson & Johnsonはヘルスケア領域で引き続き強い地位を保っており、医療機器および製薬事業が堅調です。特にがん治療薬の売上が伸びており、連続増配の実績も投資家に安心感を与えています。分社化により効率性向上が見込まれ、さらなる成長が期待されています。

以上、日本と米国の注目企業動向を概観しました。総じて貿易摩擦の影響で業績下方修正例が散見される一方、各社とも戦略転換やコスト対応で危機を乗り越えようとしています。財務健全性と競争優位を備える企業はむしろ逆風下で市場シェアを拡大するチャンスとも捉えられ、投資家は短期的な悪材料で過度に悲観せず、中長期視点で企業価値を評価することが重要です。

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