株価推移(直近1ヶ月・1週間)
日本株は直近1ヶ月で大きく上下動しましたが、全体として底堅さを示しました。日経平均株価は4月中旬に一時調整したものの、5月に入ると持ち直し、5月9日には終値ベース37,500円超とバブル後最高値圏に迫りました。年初来では依然4〜5%下落していますが、5月6日から13日の1週間では米中貿易休戦の好材料もあり約2%上昇しています。
TOPIXも5月上旬に2,700ポイント台を回復し、1990年以来の高水準となりました。米関税リスクが高まった4月中旬には一時売りが広がり、株価は調整局面入り寸前まで下落しましたが、外部要因次第で変動しやすい不安定さも残ります。
セクター別では、輸出関連株が乱高下しました。4月は米追加関税の表明を受け、自動車や機械など景気敏感株が軒並み売られました。特に米国向け売上比率の高い自動車株は、トヨタやホンダの業績見通し下方修正を嫌気した売りが先行しました。
一方、内需系やディフェンシブ株は比較的堅調で、通信や医薬品などは下支え要因となりました。5月に入り米中協議進展観測が高まると輸出株中心に買い戻しが入り、自動車・電子部品など製造業が急反発しています。半導体関連も、米半導体規制強化懸念で4月は調整しましたが、AI需要拡大を追い風に世界的なハイテク株高もあって5月第2週には上昇に転じました。
政策・規制・技術要因の影響
内閣はデジタル改革やグリーントランスフォーメーション(GX)を成長戦略の柱に据えており、関連企業への支援策が株価材料視されています。例えばデジタル分野では、マイナンバー制度の拡充や行政手続オンライン化の方針を受け、ITサービス各社やDX支援企業の株価が底堅く推移しました。
NTTは5月8日、子会社NTTデータを2.37兆円で完全子会社化すると発表。政府が3分の1を出資するNTTによる大胆なIT事業再編は「日本企業の競争力強化につながる」と歓迎され、NTT株は発表翌日に急伸しました。これにより、デジタル化への対応が一層加速すると見られています。
エネルギー政策では、原発再稼働や再生可能エネルギー投資拡大の動きが注目されました。政府はエネルギー基本計画で原発利用と脱炭素技術投資の両立を掲げ、電力・プラント関連株に思惑買いが入る場面もありました。商社株は資源高メリットや再生エネ事業拡大期待から引き続き堅調です。
政府政策と企業戦略の深掘り
政権の掲げる「新しい資本主義」に沿い、企業行動にも変化が見られます。例えば人的資本への投資を重視する政策を背景に、賃上げや従業員研修強化の発表が増えています。トヨタは4月、来季に基本給を約5%引き上げる方針を示し、人への投資を拡大しています。
また、デジタル政策に対応する企業戦略として、銀行各社がデジタル通貨やキャッシュレス決済に乗り出しています。メガバンクは日本銀行のデジタル円実証実験に参画し、金融DXを加速中です。
一方、世界的な通商リスクへの対応も企業戦略の焦点です。米関税強化で打撃を受けた自動車各社は、生産拠点の再配置や現地生産拡大を検討しています。ホンダは不透明な通商環境を理由に、予定していたカナダでのEV関連投資計画を一時凍結し、米国内工場での生産強化を進めています。
政府政策と国際環境の変化に対応し、日本企業は戦略転換を進めています。
国内市場の強みと今後の展望
日本株市場には依然いくつかの強みが存在します。特に企業ガバナンス改革の進展が大きなポイントです。東京証券取引所は2023年から低PBR(株価純資産倍率)の企業に改善を促し、資本効率向上への取り組みが進んでいます。これにより、企業の自社株買いが増加し、海外投資家の資金流入も見られます。
また、日銀はマイナス金利政策を終了し、緩やかな金融正常化へ移行していますが、急激な引き締めは行わず、長期的な経済成長を支援しています。イールドカーブの安定も市場の底堅さを支える要因です。
今後の展望として、短期的には米中交渉の行方が市場を左右し、中長期ではデジタル改革やエネルギー政策への対応が鍵となります。構造改革の成果が企業の収益向上や株主還元に反映されれば、日本市場のさらなる評価改善が期待されます。
長期的には、日本市場への評価は徐々に改善傾向が続くとみられます。構造改革の成果が企業収益や株主還元に表れ始めたことで、日本株のバリュエーション割安感は薄れつつあります。それでも依然としてPERやPBRは米欧より低水準であり、上昇余地が残っています。また新NISA制度拡充により国内個人マネーの株式流入が期待され、市場の下支え要因となるでしょう。総じて国内市場は「足元は強気と警戒が交錯する「安定成長期待」」の局面と評価できます。短期的な波乱要因に注意しつつ、中長期では構造改革と企業収益力向上を背景に緩やかな上昇基調を辿る可能性が高いと考えられます。
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