今週の市場に大きな影響を与えた5つのニュースを整理・解説します。
米FRB、政策金利を据え置き・利下げ観測後退
5月7日に行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)の会合では、政策金利が現行の4.25~4.50%に据え置かれました。パウエル議長は会見で「貿易関税政策の行方とその経済影響の不透明感が大きい」と述べ、利上げ・利下げいずれにも慎重な姿勢を示しました。これにより、当初6月にも予想されていた利下げは後退し、市場では7月から9月以降の可能性が高まっています。
労働市場は堅調を維持し、インフレも抑制されつつあることから、政策金利は「良い位置(a good place)」にあるとされ、当面の変更は見込まれていません。年内の利下げ回数は「1~4回」の幅広い予想がありますが、中心シナリオとして2~3回、年末の政策金利は3.5~4%程度と見込まれています。
トランプ政権の関税強化で景気減速懸念
2025年に就任したトランプ大統領は、大規模な関税策を発表し、世界経済に影響を与えています。特に中国に対する報復関税が次々と課され、一部品目では最大145%の関税が適用されています。この激化する貿易摩擦により、国際通貨基金(IMF)は世界成長見通しを大幅に下方修正し、欧州中央銀行(ECB)や日本銀行も政策変更を余儀なくされました。
さらに、関税の影響で多国籍企業は調達戦略の見直しを迫られ、アップルやトヨタなどの主要企業にもコスト増が生じています。トヨタは米国関税の影響で今期1800億円のコスト増を見込み、為替の円高も重なり、利益予想への影響は9250億円に達する見通しです。関税の長期化は、消費者マインドの悪化や企業業績の悪化を招き、景気減速のリスクが拡大しています。
米中「90日関税休戦」に合意、市場は急反発
5月12日、米中両政府はジュネーブでの協議を経て、90日間の「関税停止」で合意しました。これにより、米国は中国からの輸入品への関税率を145%から30%に、中国は対米関税を125%から10%へ引き下げました。
このニュースを受け、世界の株式市場は一斉にリスクオンに転換し、S&P500指数は+3.3%、ナスダック総合指数は+4.4%と大幅上昇しました。さらに、米ドル指数は3年ぶりの安値圏から急反発し、円相場は1ドル=148.39円まで2.1%下落しました。また、金価格も3,500ドルから2.7%下落し、3,234ドルとなりました。
市場関係者は「もしこの合意が維持されれば、トランプ政権と投資家にとって大きな勝利となるだろう」と評価していますが、一方で「一時的な安心感に過ぎない」との見方も残っています。
欧州で利下げ再開、ECBが景気テコ入れ
欧州中央銀行(ECB)は4月17日の理事会で主要政策金利を0.25%引き下げ、預金金利を2.50%から2.25%へと調整しました。これで7会合連続の利下げとなり、景気下支えを強化しています。
ラガルド総裁は「米国による関税の大幅拡大とそれに伴う不確実性が輸出減少や投資抑制を通じてユーロ圏成長を下押しする見込みだ」と発言し、景気後退リスクを強調しました。市場は今後数ヶ月で追加利下げが2~3回実施されるとの見方を示しており、6月にも追加緩和が議論されています。
政策スタンスの転換により、欧州経済は下振れリスクを抱えつつも、景気支援に向けた動きが活発化しています。今後も貿易戦争の行方に左右される展開が予想されます。
安全資産の乱高下:円・金利回り・原油の動向
貿易戦争の激化と休戦合意を受け、安全資産市場は激しく変動しました。リスク回避局面の4月には円やスイスフランが急騰し、金価格も過去最高値を更新しました。米国債利回りは低下し、価格は上昇しました。
一方で、5月第2週の米中休戦報道後は、リスクオンムードが広がり、安全通貨は急反落。金価格も利益確定売りが入り、原油価格も急激に値を戻しています。市場の不安定さは続くと見られ、投資家には慎重なリスク管理が求められます。
コメント